虹色の奇跡 第37.5回「幽霊たちの集い」

「………ん…ここは…?」
マーズ・バーストフレイムはぼんやりとした意識の中、目を覚ました。
「天国か…いや、地獄かも知れんな。いずれにせよ、私は死んだ…」
ふぅ、とため息を漏らす。ふと、周りを見渡す。
はて?天国や地獄にしては現実味が…。
マーズが、ここが学校の校舎の陰であることに気づくのに、そう時間はかからなかった。
「!?なんなんだ、ここ…どう考えてもここは…」
「あ、お目覚めになったんですね。よかった~」
「マーズ、具合はどう?」
2人の少女がこちらにやってくる。1人は…
「セリア、これはいったい…?」
ネプチューンことセリアである。
「マーズ、落ち着いて聞いて欲しい。まず、ここは麻帆良学園の一角らしいの。それから、どうやら私たちは完全には死んでいなかったらしいわ。」
「はぁ?」
怪訝な顔をするマーズ。と、マーズはある事に気がつく。
「あれ?セリア、体が透けている…。そっちの人も。あれ、そういえば私も…」
「そう、どうやら私たちは魂が肉体から抜け出した状態である、生霊になっているみたいなんだ。」
「生霊だって?まさか、そんな…」
「あの、でも、たぶん間違いないかと思います。」
今まで黙っていた、マーズも見知らぬもう一人の少女が口を開いた。
「あなたは?」
少女はニッコリ微笑むと名乗り始める。
「私は相坂さよ。一応この麻帆良学園の生徒です。」
「一応って…?」
代わりにセリアが説明する。
「なんでも、彼女はこの学園に未練があるらしい、呪縛霊らしいのよ。ほら、彼女には脚がないでしょ。」
「え?ああ、そういえば。」
マーズは目を丸くする。
妖怪や怨霊の類はこれまでの人生の中で山ほど見てきたので、それほど驚く事ではない。
それでも、この世界に来てからは初めて見る。
さよはゆっくりと話し続ける。
「その通りです。ちょっとワケありで…。それで、お2人にはちゃんと脚がありますよね?私とは違う存在…そこから導き出される結論を言いますと…」
「私たちは、まだ完全には死んでいないってこと。肉体がなく、魂だけになってしまったにも関わらず、まだ事実上は生きているってこと。たぶん間違いないわ。」
マーズは、まだいまひとつ理解しきれていないような表情で、目の前の2人を見据えた。
「な、なんでこんなことに…?」
「詳しくは分かりませんが…。“死んでも死に切れない”という言葉がありますよね?きっとお2人には、まだこの世に強い未練というか、想いというか、そんなものがあるからだと思います。だからこの世に命をつなぎとめたというか…」
「未練…だって?」
マーズはますます怪訝な顔になる。セリアが続ける。
「ええ、少なくとも私にはあるの。」
「お前の無二の親友、マーリンのことか?」
マーズが思いついたように言う。セリアは首を縦に振り、答える。
「そう、それもあるわ。あとそれと仲良くなった友達に会いたくて…」
セリアは木乃香と刹那を思い起こしながら、目を閉じる。
「未練…か。本当は父さんや母さんたちに会えると思っていたが…。どうやら私はまだ、ファムのことが気になってしかたがないらしい…」
マーズは沈痛な面持ちで目を閉じた。姉妹のように仲良くしてきたファム。
この先、重大な使命を彼女は担うことになる。できればそれを見守ってやりたいと思っている。
しばらくの沈黙の後、マーズが話し始めた。
「そういえば、他の連中はどうなったんだ?ひょっとして…」
少し恋人たちに会えるのでは、と期待したマーズであったが…。
「残念だけど、どうやら私たちだけだったみたいよ。」
セリアが答えた。
「そうか…フ、デイモスたちがいないんじゃあな…」
マーズのわずかな希望はすぐに消えてしまった。
「いえ、お2人の他にも、もう1人生霊となっておられる方がいますよ。紫色の髪の小さな女の子で…」
「レズン…レズン・プルートか。」
プルートの本名である。
「桜咲刹那に未練があるのかねぇ…。で、あいつはどこに?」
マーズが質問する。さよは少し考えてから、
「さあ、分かりませんが、おそらく復活するために何かをされているのだと思います。」
と答えた。
「まあ、何はどうであれ、私たちはまだ生きているみたいなの。半分死んでいるともいえるけどね。ともかく、私たちも復活する方法を何か考えましょうよ。」
セリアの提案にマーズは少し考えてから、
「そうだな。もし、生き返られるなら、やっぱりその方がいいのかもしれない。私たちも行こうか。」
「あ、待ってください。エヴァンジェリンさんが帰ってきたみたいです。あの人に相談すれば、何かいい方法が分かるかもしれませんよ。私、呼んできますね。」
そう言うとさよは、動き始めた。と、
コケッ、ドテッ!
「あうううう~…」
「「あ、転んだ…」」
マーズとセリアは唖然とした。脚のない幽霊が転ぶか普通?そんなの聞いたこともない。
「ごめんなさい。私幽霊なのにすごくドジで…ヒイイイイ!」
ヒョオオオ…
風の音にびびるさよ。
「私、怖がりなんです。ぐすっ…なのでいつも夜は明るいコンビニとかに出かけて…」
本当にコイツは幽霊か?
そういえば、ここは街灯がついていて比較的明るい。2人をここに運んだ理由は、暗い校舎内だと怖いから…?
マーズとセリアが呆れていると、空から学園の一角に降りて行く人影が見えた。
おそらくエヴァや茶々丸たちであろう。
「とにかく私はあの人に相談してみるわ。このちゃんや刹那さん、それにマーリンにまた会いたいから。」
「私もそうしよう。私はファムを守らなければ。ミュウやシトラスたちにもまた会いたいし。」
2人はさよのほうを向いた。
「案内を頼む。」
マーズが柔らかな表情で手を差し伸べる。
「よろしくね、さよちゃん。」
セリアも微笑みながら手を差し出す。
「は、はい。こちらこそよろしくお願いします。」
友人の少ないさよは、笑顔でマーズやセリアと握手を交わしたのだった。
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by konosetu | 2001-01-01 00:37 | 話題なの~♪(^▽^) | Comments(0)