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虹色の奇跡 第55回「ほえろ、零菜!」

爆炎の中から零菜が突進してくる。クレイモアがまさにダグバを捉える瞬間だった。ところが…
ガシッ!!
「なにっ、新手か!?」
クレイモアと剣が交差する。今零菜の目の前には、冷酷な目つきをした少年がいる。キッと零菜を睨みつけている。
静かな気迫を込めて零菜も雷雪を睨み返す。刃同士を弾き合い、2人は後ろへ跳躍し、距離を空ける。
「おお、おめえ黒竜雷雪じゃねえかー。久しぶりだな。ヒッヒッヒ!」
「お前も相変わらずだな、ダグバ。」
黒竜雷雪と呼ばれた少年は情のこもっていない口調で応える。
「黒竜雷雪だと!?あの冷酷無慈悲の暗殺者か。」
零菜がウェイアードでは有名な殺し屋の名を思い出す。
「話は後だ。お前を迎えに来た。俺と来い。」
黒竜雷雪と呼ばれた少年は振り向かずに、背後にいるダグバに冷え切った口調で言う。
「ヘン、雇われ傭兵の分際で俺に指図すんな。古い友人のよしみでタメ口は許すけどよぉ。」
黒竜雷雪はディバイン・クルセイダーズの正式なメンバーではない。腕を買われ、幹部クラスの者に雇われているのだ。
巨大組織ディバイン・クルセイダーズの総帥である、ダグバとは古くからの知り合いだ。
「分かった。好きにしろ。しかし、俺の任務はお前を連れ帰ることだ。お前の気の済むまで待たせてもらう。」
そう言うと、雷雪はダグバの後方へと下がった。傍観することにしたらしい。

自分が会話に参加する余地もなかった零菜は少しポカンとしている。
「なんだ?アイツ…。まあ、狙いはダグバ1人。邪魔しないならほっとくと。」
再び迎撃体勢になる零菜。眼前ではダグバが未だにニヤついている。ベロリと舌なめずりをする。
「ククク…そろそろケリを着けようか。ハァァァァァ…」
「ムッ!」
突然ダグバの気力が、かなりの実力者である零菜ですら驚くほど一気に上昇する。
「なんなんだよ、このバカデカイでたらめな力は!?」
さすがの零菜もひるむ。ダグバの目が赤い光を放つ。ダグバの筋肉質なボディが、さらに隆々としてくる。
「オオオオオオ…だあぁぁぁぁっ!!!」
ダグバは一気に零菜との間合いを詰める。
「ウゴッ!…オ、オ…。ぐあっ!」
腹に固く重いパンチをくらい、さらに組んだ手がハンマーのごとく頭上に振り下ろされる。
ズドォォォォーン!!!
もろに顔面から地面に激突する零菜。それでもなんとか起き上がろうとする。しかし、そこにダグバが強力な蹴りを入れ、再び地面に沈む。
「く…は…あ…」
うめき声を上げる零菜に、ダグバは容赦なくグリグリと足で零菜の頭を踏みつける。
「ククク、どうだよ、女。俺の強さが分かったか?はっきり言って俺は、まだ本気の半分の力も出してないんだぜ。」
ダグバは零菜の青いショートヘアを背後から逆手で鷲づかみにすると、持ち上げて自分の顔を零菜の顔に近づけて覗き込む。ニタニタ笑って…
「へへ、やっぱりなかなかの美人じゃねぇか。いいか、今からお前は俺のモンだ。ククク…」
ダグバは零菜の左頬を舐める。
「や、やめ…きたねぇ…」
かすれた声で抵抗の意を見せる零菜。しかし、体を動かせない。
「へへへ、フン!」
ダグバは零菜を仰向けにする。舌なめずりしながら零菜の体をしげしげと見つめる。
「さあて、楽しませてもらおうか…。お前のすべてを俺がもらう。かわいがってやるぜぇ。すぐに気持ちよくなるからよぉ。俺と一緒に快楽の世界へ行こうぜぇ。」
ダグバが手を一振りすると、零菜の着衣がすべて切られ、塵と化し消滅した。よだれが零菜の体に垂れていく。
「ハァハァハァハァ…うまそうだ。いただくぜぇ…」
自分のよだれが零菜に触れたとき、ダグバの興奮は頂点に達した。零菜の肉付きのよい身体に手を伸ばす。

そのときだった。不意に零菜の目がカッと見開かれた。その目には猛烈な殺気が込められている。
「触るな…このゲス野郎がー!」
その瞬間、零菜が信じられないような怪力で、ダグバの腕をがっしりとつかんだ。
「うがああああ!?!?」
ボキボキと骨が砕ける音がしてダグバが悲鳴を上げる。
「つああああああ!!!」
続けて零菜の膝蹴りが、ダグバの腹に入る。
「ごぶっ!?」
ダグバの目が飛び出そうになる。零菜は間を空けず、回し蹴りをダグバの頭部に見舞う。
ズガァァァーン!!!
ダグバは上空30メートルほど飛ばされ、地面に叩きつけられた。
「ぐほっ…なんだ、この女…なっ!?」
ダグバは目を見張った。目の前にいるのはさっきの美女ではなく、1体の異形の者であった。
茶色い皮膚、エイリアンのような長い顔、頭に数本の角。世羅零菜が変身した姿である。
ウェイアードでも、このマホラワールドでも最強の魔物の一種である、人呼んで――夢蜘蛛。
夢蜘蛛化した零菜の低い声が響く。めいっぱい怒気と殺気が込められた声。
「よくも私をコケにしてくれたね。このお返しは…イタイよ!」
その瞬間、零菜の姿が消えた…ように見えた。
「チッ、保護色か!」
周りの風景に溶け込ませるカメレオンの能力。ダグバは彼女のこの能力を瞬時に見破った。そうと分かれば…
「チェストォ!!」
…応戦できなかった。ダグバは零菜の見えない一撃を、場所は察知したものの、あまりの速さのために防ぎきれなかった。
「どおおおおおお!?」
宙に投げ出されるダグバ。零菜も跳び上がって宙で連続に殴りつける!
バキッ、ズガッ、ベキッ、ボキッ、ゴキッ、ドウッ…ヒュウウウウ……ズガァァァァーン!!!!!
粉塵が辺りを覆った。約20秒後、ようやく砂埃が晴れ、ダグバの姿が露になった。
「フッ、どうした。私はまだ半分どころか10分の1のパワーも使ってないぞ。」
先ほどのダグバのセリフをそっくり返してやる。
「フ、フフフ…アハハハハハハハハ!!」
零菜の予想に反して、ダグバは笑い出した。
「いいねぇ、その強さ。惚れ惚れするねぇ。ますますお前が欲しくなったぜ。」
「ケッ、まだ言うか…」
ダグバは、醜い異形の姿になってもなお零菜を欲している。

「ダグバよ、もうその辺にしておけ。腕まで折られてまだやる気か。」
それまで沈黙を守っていた黒竜雷雪が口を開いた。
「あん?」
ダグバは雷雪の方を見やった。雷雪は厳しい表情でダグバを見据えている。ダグバにさえ、有無を言わせぬ表情。
今のままではダグバに勝ち目がない、そう考えたのだろう。
「そろそろ行くぞ。」
ダグバは肩をすくめ、行きかけたが、思い出したように零菜の方に目を向ける。
「ククク、そういやまだ名前を聞いていなかったな。」
これを聞いて、雷雪が「ほほう」と目を細めた。女をモノ扱いしているダグバが、相手の名前を尋ねるなんて珍しいからだ。
「あんまり名乗りたくはないが…まあいいだろう。零菜、世羅零菜だ。」
「零菜か。お前が気に入った。俺のモンに…いや、側近になれ。」
「はぁ?」
突然の誘いに零菜は顔をしかめた。
「何の冗談だ?」
「冗談などではない。お前を俺の側近に…、いや…俺の愛人に…」
言いかけたとき、いつの間にか近くにいた雷雪が、ダグバの肩に手を乗せた。
「もういいかげんに行くぞ。我らの迎えが来た。これ以上ここにいるのは、さすがにマズイ。」
雷雪はダグバを半ば強制的に引っ張っていく。
「フ、世羅零菜。また会おう。お前の胸の青いバラの刺青…いつかあれを俺の色に染めてみせる。」
ダグバは最後に言い残すと、ゲートをくぐって行った。
「逃がすか!このっ…」
駆け寄ろうとした零菜に、雷雪の放った電撃が飛んでくる。
ドン!!
小規模の衝撃だったが、零菜の目潰しには十分だった。
「クソ…ここまで追い詰めて…」
ゲートが閉じたのを確認した。人間体に戻った零菜は、歯軋りし、しこたま地面を殴りつけたのだった。
「チクショオオオオオオオオオ!!!!!」
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by konosetu | 2001-01-01 00:55 | 自作小説 | Comments(0)

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