遠まわりする雛
桜の舞い散る中で…。
春休みのある日、えるから電話がかかって来て「傘を持ってくれませんか」と奉太郎は頼み込まれます。奉太郎が詳細を訊くと、えるの住んでいる地区では毎年「生き雛祭り」が開催されており、そこで雛に傘を差す役目の人物がいるものの、都合により代役が必要となったようです。
傘を差すだけなら…と奉太郎はそれを了承。が、まさか雛が地区を歩き回り、さらにその雛をえるが務めることになっているとは思いもよらず…。
当日、指定された神社に向かった奉太郎。その途中、長久橋という橋は工事が始まろうとしていました。
人々が忙しそうに準備に追われる中、案内された部屋の中で暖を取っていた奉太郎。関係者からよろしくお願いすると挨拶され、奉太郎も丁寧にそれに応対します。
準備の最中、関係者らの話から「生き雛」の通行ルートに長久橋が含まれていることを奉太郎は耳にします。その橋は工事をしていると奉太郎は報告。途端に混乱に陥る関係者達。事前に工事を延期してもらうようにお願いしていたはずなのに、誰かが工事許可の電話を入れてしまったようです。長久橋を通らなくては、川の東側は歩けても西側を歩くことが難しい。関係者の1人、茶髪の青年は遠路橋を歩くルートを提案するも、なぜかみんな躊躇っている様子。
そんなとき、えるに呼び出された奉太郎。衝立の向こうで支度中の、普段と雰囲気が違うえるに事情を説明。するとえるは自分が宮司に話し、父から氏子総代に連絡をつけてもらうと伝えて欲しいといいます。それを聞いた関係者らは安心して遠路橋を通るルートに決定。
茶髪の青年曰く「滅多に見られない行列」である今年の「生き雛祭り」が始まります。雄雛はあの入須先輩。そして雌雛はえる。
奉太郎はそのえるを見た瞬間、来るべきではなかったと、省エネ主義が脅かされていることに気づいてしまいます。そして桜の下を通るえるを後ろから見ていて、もしこちらに振り向かれたらと思っていると…里志に呼びかけられ、我に返ります。
何とか役目を終えた奉太郎は、里志や摩耶花と話をします。えるや入須は素敵だったが、奉太郎は似合っていなかったと茶化す里志。里志が団子を買うため席を立っている間に、摩耶花はバレンタインの件について奉太郎に感謝を述べます。どうやら奉太郎が里志につっかかったことも聞いたようです。珍しく奉太郎を邪険に扱わない摩耶花で…。
奉太郎は同じく役目を終えた入須ともばったり出会います。合点がいかないことがあるようだが、と問う入須に対し、奉太郎は少し考えた後に「分かりません」と態度を改めます。「君なら謎を解いてみせると思ったのだが」という入須に奉太郎は「やめてください」。入須は映画撮影のときには役目があったが、今日は違う。この身から虚言は出ないよと告げます。
奉太郎が千反田家の縁側に座っていると、長久橋の件でいつも通り興味津々のえるがやってきます。2人ともこの件を引き起こした犯人として、同じ茶髪の青年を思い浮かべていました。
奉太郎は彼が毎年開かれる祭りを「滅多に見られない行列」と言ったことを覚えていました。毎年見られる行事なのに、「滅多に見られない」と言ったのはなぜか? 青年の狙い通り今年はルートが変更になり、狂い咲きの桜の下を「生き雛」が通ることになったのです。「そんなことのために」とえるは言いますが、奉太郎はまんざらでもなかったようで…。
一方、えるは「面子を潰しても平気な人」で思い当たったといいます。えるは茶髪の青年は写真の専門学校に通っており、珍しい写真が撮りたかったのではと推測。
奉太郎の帰り道に付き合うえる。
えるが宮司に連絡すると言った後、場が落ち着いた理由。かつてこの辺りは南北に別れており、諍いがありました。今では解消されているものの、神事の際は連絡をつけなくては問題になるといいます。その役割を果たせる人物は少ない。小さな町の、決して小さな出来事ではないが、大きなこととも思えない。
えるは2年生に進級したら、文理選択で理系を選択するといいます。大学に入ってこの街を出ていくことがあっても、千反田家の娘として、いずれここに戻ってきて役割を果たしたいといいます。それはみんなで豊かになる方法――商品価値の高い作物を開発するのを実現させること。一方、みんなで貧しくならない方法――会社運営をするのに自分は向いていないことに、えるは文化祭のときに気づいていました。
この場所は水と土しかなく、人々も段々老い疲れてきている。最高に美しいとは思わない。けれども…。
「折木さんに、紹介したかったんです」
奉太郎はえるが諦めた「みんなで貧しくならない方法」を自分が修めるというのはどうだろうと言おうとします。けれどもそれを言える気がしません。そのとき、奉太郎はバレンタインのときの里志の気持ちを理解できたような気がしました。そして奉太郎は別の言葉を告げます。
「寒くなってきたな」
「いいえ。もう春です」
舞い散る桜の中で微笑むえる。そんな彼女を見て僅かに微笑む奉太郎で…。
ああ、美しいですね。最後の最後になんて綺麗な光景を見せてくれたのでしょう。ありがとう製作者の方達。
完全にえるちゃんに見惚れていたね、ホータロー♪
里志が摩耶花にだけはこだわっていいのか迷っていた気持ちを察した奉太郎。
「やらなくていいことはやらない」。えるにできないことを補助するなんてこと、奉太郎はやらなくてもいいことのはず。けれども奉太郎がそう思ったということは、えるに対しては省エネ主義など関係なく行動するということ。それが許されるのかどうか…。自分のモットーを曲げたり例外を作ったりするのは、実は想像以上に葛藤が生まれるのかもしれません。簡単なようで、当人にとっては難しい問題。その辺は柔軟になった方が楽なんですけど…。
とはいえ、傍から見れば奉太郎とえるはバカップルにしか見え(ry
里志と摩耶花もいい感じに落ち着いたようで。奉太郎が里志に突っかかったことに対しても「うん、聞いた」と摩耶花。摩耶花可愛い。この時の奉太郎の反応も、わたし、気になります。見せて欲しかったですねぇ。
入須先輩も登場。奉太郎は女帝事件のせいで、入須先輩に苦手意識を持ってしまっているようですが。今回の彼女は背負っているものもなく、ただただ純粋に奉太郎に疑問を投げかけ、奉太郎ならばと期待したのでしょうか。彼女も決して悪い人ではないでしょう。特に利害が絡んでいなければ。
氷菓を評価です(各項目10点満点)
○ビジョン:10点――後述
○キャラ:10点――後述
○シナリオ:9点――後述
○燃え:3点――きな臭いことも起こらず、平和そのものでした。
○萌え:9点――えるたそ♪(ノ´ω`)ノ
○意外性:8点――原作を先に読んでいたこともありますけど、あっと言わせられる展開や演出が多かったです。
○歌・曲など:9点――テーマ曲は凄く好みです。特に「優しさの理由」と「君にまつわるミステリー」は大のお気に入り。BGMもとても世界観にマッチしていて、物語を盛り上げてくれました。
○熱中度:10点――原作や漫画版も集め、DVDも収集中。「わたし、気になります!」などの名言も各所で使いまくっていますw 私は好きなアニメでもラジオ番組はあまり聴かないのですが、「古典部の屈託」に関しては聴いています。
○オススメ度:9点――大勢の人に見てもらいたいです。アニメに馴染みのない人にでも受け入れられるんじゃないでしょうか?
○全体:10点――話数は少なめですが、全体的に素晴らしい仕上がりになっていたと思います。登場人物が非常に丁寧に描かれており、キャラクターがしっかりと「生きて」いました。複雑な感情描写をいろんな手法で描いていましたね。そのため、主人公の奉太郎にしっかり感情移入できたし、えるも魅力的なヒロインだと思えました。奉太郎や里志のような男性キャラを好きだと言えるのは、深夜アニメにしては珍しいです。奉太郎とえるの深まっていく関係、奉太郎と里志の気の置けない関係、里志と摩耶花の複雑な恋愛事情、えると摩耶花の仲良さげな友情…見ていて気持ちがほっこりします。古典部キャラ以外の人達もしっかり描かれていました。1回限りの登場のキャラもいたりしましたけど、人気声優を起用したりして思い入れの違いを感じました。
映像美も大きいです。ミステリー関係においては矛盾などが起きないよう細心の注意を払ってアニメ的な描写は極力避けた。しかし、人物の心情描写に関しては表現に制限を設けなかった…。雑誌のインタビューでスタッフがそんなコメントをしていました。確かにキャラクターはしっかり動きますし、街並みも美しい。止まっていても問題ないような背景の端役の人物までちゃんと動いているんですよね。さすが京都アニメーションだわ。
ちなみに、最も好きなエピソードは「ワイルド・ファイア」の料理大会です。
私は元々アニメから入ったのですが、第1話を見た時点でビビッと来るものがありました。第2,3話を見た時点でこれはもう先が気になって仕方がなくなったので、漫画版を…でもこれでは遅すぎると、遂に原作小説に手を出しました。読んでいない小説が溜まっているので、当分新しいものは買わないようにしていたのですが、その制限を破りました。もう夢中になって読みまくり、今回はアニメ化されなかった第5巻までハイペースで読み終わりました。
結果として先に原作を読んだのは正解でした。原作との違いを比較しながらアニメ版を試聴することができたからです。アニメではやむなくカットされていたこともちゃんと理解できましたし。そしてアニメ版で追加・改変された要素にニヤリとすることも。ほとんどの改変は改良だったと思います。
ミステリー作品ですが、ほとんどの場合謎が解けたときにスッキリとはせず、ほろ苦さや悔しさ、切なさが残ることが多かったですね。事件そのものも犯罪が絡んだりきな臭い話になったりはせず、えるが「わたし、気になります!」と言わなければ、放置されたままになった謎も多かったでしょう。自分の生活を見回せば、謎と呼べるものはどこにでもあって、それを気にするかどうかはその人次第。しかし、探究心・好奇心を持つということは、人間が進歩するための第一歩なのかもしれません。「知らぬが仏」という言葉があるように、世の中知らないままにしておいた方がいい謎があるのも確かで、知りたくなかったことを知ってしまうこともあったでしょう。それでもやはり「知りたい」という欲望を抑えつけてしまったのでは、思考はそこでストップしてしまいます。
いろんなドラマやアニメを見ていると、探偵役の人物って多くの場合、事件に首を突っ込みたがるものなんですよね。「知りたい」と思っているから。知ることで真実を暴き、人々の心に平和を取り戻したときは大きな達成感を得られるのだと思います。ところが、折木奉太郎には「知りたい」という欲望がないどころか、面倒事からは遠ざかりたがる性分があります。優れた推理力があるにも関わらず。それに博学とまでは言い難い。そこでそんな彼を謎解きに引っ張るのが千反田えるであり、知識や情報を提供するのが福部里志。そして時にきつい指摘を入れてフォローする伊原摩耶花。推理力があることと、探究心があることと、知識があることは全く別のことなんですよね。多くの探偵達はこれらを同時に持ち合わせているのですけど。古典部が力を合わせて謎解きに挑む、問題に対処する。そこがこの作品における他作品との差別化ですね。そもそもえるが問題視しなければ、「謎」と認識されることもなくスルーされてしまったことも多いですしね。
それでも奉太郎は終盤、えるのためなら「やらなくてもいいことなら、やらない」という自分の主義を曲げてもいいかもと心を揺らしました。もう恋人同士に見えなくもない奉太郎とえるですが、この2人の関係が今後どうなっていくのかが、わたし、気になります! ぜひとも原作者様にはどんどん続きを描いていただいて、数年後にぜひ第2期をやって欲しいと熱望します。
MVP:千反田える
「わたし、気になります!」
最近、しょっちゅうよその場でもこのセリフを使いたくなってしまいますw
このセリフが事件や謎解きの発端になることが多かったです。彼女が疑問に思わなければ謎は謎のまま忘れ去られていたことも多かったことでしょう。
気になるって思うことはきっと大切なことだと思います。彼女が主人公である奉太郎を変えようとしているのは間違いないでしょうね。
スタッフ・関係者の皆様、本当に素晴らしい作品をありがとうございました。























































































































































































































































































